淫神供儀ネヲナ~TS変身退魔少女の屈服~ 7/16(火)より絶賛発売中!
導入
終わると思った?
残念、終わりません!むしろここから加速する!
圧倒的インタビュー記事クオリティでGoogleからの寵愛をほしいままにする「JDの同人ゲーム布教」インタビュー企画、待望の第3回!
第1回:やさにき
導入 同人エロゲ制作者をもっと知りた〜〜〜〜〜〜〜い!! という需要、めちゃめちゃあるのにやってくれる人あんまりいないよね… …… …… …… じゃあ、私がやるか。 ということで始まりました。ゲ[…]
第2回:ヌケル(かわいそうなのは抜ける)
制作者インタビュー第1回(やさにき先生) [sitecard subtitle=関連記事 url=https://jdnoblog.com/?p=4896 target=] 導入 同人エロゲ制作者をもっと知りた〜〜〜〜〜〜〜い!! […]
今回は、同人エロゲ界の風雲児!
妻獲り迷宮、淫界人柱アラカ、淫習のカクリヨ村などの革新的エロソリューションを提供し続ける鬼才集団、サークル「I’m moralist」の代表……
U-mu先生にお越しいただきました!
(サムネは怖いですが実物はイケメンで優しいお兄さんです。)
サークルCi-en→こちら
X(旧Twitter)→ こちら
ー今回はオフライン、東京での開催です!よろしくおねがいします!
よろしくお願いします。
ーまずは自己紹介からお願いします。
はい。I’m moralist代表のU-muです。会社経営が専門です。エロゲが好きというか…割と人生で辛い時にエロゲに救われたので、ゲームとオナニーは世界を救うなと思っていて、世界を救いたくてこの業界に入りました。
ー世界を救う。いきなりすごく大きな話ですね。
そうですね。あと、プリンセスナイト・ローズとかをプレイしてて、ああ、エロゲってセックスを超えるなみたいなとこがあって、そこを追求したいという思いもあります。
ーなるほど。その部分も詳しくお伺いできればと思います。
ひとつ不安なのは、普段社内では横文字を使いすぎるので、今日のインタビューは横文字を喋るなって社員に言われてきたんですけど、どう喋っていいかわかんないっていう点ですね笑。大丈夫でしょうか。
ー笑。U-mu先生にしかできない話を今回はしていただきたいので存分に使っていただければと思います。よろしくお願いします!
本編
今から始まるのはインタビューではなく講義です。
ーさて、それでは始めていきます。同人を始めたきっかけは?
始めたきっかけは……同人ってSPAモデルじゃないですか。
ーSPA?
製造小売業……つまり、製造者がプラットフォームを介して消費者に直販するモデルじゃないですか。
ーなるほど。そうですね。
割と今のゲームって、特に3Dゲームなどで開発費の高騰とか言われてますよね。そうなると、SPAモデルで販売するような業種の方がイノベーションを起こせるんじゃないかなと思っておりまして。同人こそが今からのイノベーションの舞台なんじゃないかなと思って始めましたね。………………というような話をいつもしているのですけど、大丈夫でしょうか。JDさんのインタビューの趣旨に沿った話ができるかなって今とても不安で笑。
ーいえいえ!まさにそのような話は私が大好物なので。是非お願いします。つまり、同人ゲームがこれからくるだろうという狙い?
そうですね。まあ、くるだろうというのもありますし、一番尊い仕事かなと思っていて、そっちのほうが大きいですね。
ーというと?
エロゲって……一番尊くないですか?笑
ー笑。そこちょっと詳しく聞きたいですね。
なんだろう。例えば、誰にも迷惑かけないし、健康にも良いし、それでいて自己実現できるわけじゃないですか。それほど尊いものってないと思うんですよね。まあ、一番っていうのはちょっと言いすぎかもしれないですけど、そういう仕事なので、いつかやりたいなぁと思っていました。
ー自己実現というのはクリエイターとしてということ?
もちろんクリエイターも自己実現できますし、プレイする人も自己実現できると思っています。というのは、例えばプレイする人がおっさんだとして、美少女になりたいとかTSしたいという願望がありますよね?それが少なくともゲーム内では叶えられるわけじゃないですか。そういうのってすごい「救い」だなって思っていて。その点で世界平和に貢献しているなと思って始めたみたいなところはありますね。
ーなるほど世界を救うというのはそういう意味だったんですね。
RPG1作目:妻獲り迷宮~シェラリィドの異種姦終身刑~
ー『妻獲り迷宮』は初めての作品?
妻獲り迷宮~シェラリィドの異種姦終身刑~ 2019年7月発売。DLsiteAWARD2020「サプライズ賞」受賞作品。
迷宮すべてが、ヒロインの子宮を狙う――
お家再興を目指す少女の大切な子宮が、汚く、下等な異種姦生命体の精液で汚染され、
次代を育む卵子を、異種の精子に輪○される。「そんなこと、許していいわけないでしょう……!」
尊厳を守り、プライドを守りさえすれば絶対に負けない……! このゲーム、勝った……!
出典 dlsite
そうですね。個人でPixivなどはやっていたんですけど、サークルとして出した作品は初めてですね。
ーメンバーとしてはU-mu先生と犬侍先生の2人?
そうですね。
【犬侍】
サークル『I’m moralist』プランナー、メインシナリオライター
ーどのような経緯で一緒にやろうという話になったんですか?
きっかけは私の依頼なんですよね。ゲームを作ろうと思ってて、とりあえずPixivで絵を描いていました。それで、しばらくすると絵に関してはギリギリ売れるものを描けるかなという状態になったんですね。
ーはい。
そこで次に、ノクターンノベルズ(成人向け小説家になろう)でシナリオの特訓をしたんですけど、シナリオが全然書けなくて。その時に犬侍の文章を見ていたんですよ。めちゃくちゃ良い文章書くなと思っていたんですけど、Twitter始めたらコミッション募集していますって書いていたので、スカウトというか、「お願いします!」って急いで言いに行きましたね。
ーそうだったんですね。具体的にどんな感じで依頼したんですか?
こんな感じですね。犬侍に「見せたら?この熱い文章」と言われたので見せても大丈夫だと思います。
ーすごい笑
最初は契約書素案みたいなものを作ろうと思っていたんですけど、めっちゃ長いですね。こんな長いの書いていたんだと。
ーめちゃくちゃ網羅的ですね。本当に契約書みたいな。解除条件や、権利は犬侍先生に帰属しますみたいな……これは……犬侍先生からの返信ですかね。
ーお互いに同人ゲーム自体が初めてという状態だったんですか。すごい…いいですねこれ。まさに芽吹く瞬間のやりとりですね。
そうですね。
ーありがとうございます。こんなものを見せていただいて。ちなみに妻獲り迷宮はどれくらいの期間で作られたんですか?
制作は……そうですね。1年くらいですね。2019年の7月にこのDMを送ってリリースがその次の年の6月か7月くらいだったはず(7月11日発売)ので1年くらいですね。
ー結構早かったんですね!この作品大好きです。もちろんI’m moralistさんの作品は全部好きなんですけど。初めてやったときに衝撃を受けたというか、エロいRPGではなくエロのためのRPGという売り文句が私にめちゃくちゃ刺さりました。
ありがとうございます。
ーあらためてコンセプトというか、ゲームを作るにあたって全体を通して大切にした点について教えていただけますか。
そうですね、基本的には大きく分けて2つあって、まず、1つ目はプレイング自体がエロいゲームを作りたかったんですよね。従来の凌辱系のゲームというのは間違った選択肢からエロに進むじゃないですか。
ーはい。
そうなると、これは犬侍が言っていたことなんですが、エロがメインディッシュじゃなくて、こう……間違ったことに対する罰のようになってしまうんですね。エロシーンを回収するためにわざわざ負け方を考えなきゃいけなかったり、何周もするというのはプレイヤーにとってもストレスですし、何よりそれってゲームクリアとしての努力と相反するじゃないですか。で、同人RPGも同じ課題を持っていたんですよね。私たちはゲームクリアとしての努力をしながら敗北とエロが重なるような体験ができるゲームを作ることをテーマとしていたのでそこを再現できるか試しにやってみた感じですね。
ーなるほど。そういう発想がまず根底にあったんですね。
はい。2つ目としては当方丸宝堂さんのコボルドの家畜騎士ってあるじゃないですか。
「あれめちゃめちゃ良いよね」って話をしていて。バッドエンドでゲームオーバーになった後もずっとゲームを続けるっていうシステムをやりたかったんですよ。主にその2点ですね。
ーありがとうございます。その試みは売上やコメントを見てもユーザーに受け入れられたと言っても良いんじゃないでしょうか。
そうですね。最初、3000本は売れるっしょみたいなことは言っていたんですけど、意外と伸びましたね。
ー当時、初速でどれくらい売上が伸びました?
あまり覚えていないんですけど、多分数ヶ月〜半年で2万本は超えていましたね。DLsite発売の半年後にFANZAに出したときに2万本!って書いた覚えがあるので……
ーそうでしたか。そののちに後続の作品が出てさらにじわじわ伸びて現在は3万本と。すごい。こうやって販売ページを見ていると、下の方にオナニーフレンドリーという文言があるのですが、これらの文章の意図についても詳しく教えていただけますか。
社内コンセンサス(合意)が取れているところとしては、先ほど申し上げた通り、プレイング自体がエロいゲームを作りたいというところでそれをただ書き連ねてるというところはありますね。それに加えて、これは個人的意見なんですけど、ユーザーが感じているストレスを想像して書くとそんな感じになるのかなと。
ーなるほど、まずプレイングがエロいゲームというのが1点と、ユーザーが感じている、例えば、「いや、いつエロくるんだよ……」みたいな課題感を代弁したと?
そうですね。抽象的に言えばめっちゃプレイングがエロいゲーム。体験自体がエロいゲームなんですよ。それをユースケース……ユーザーの言葉に置き換えるとああいう感じの紹介文になるのかなと思って羅列したという感じですね。加えていうと、これもまたサークルとしてではなく個人的な見解になるんですけど、ゲームって無駄な体験はないって思っていて、
ーというと?
私、Chivalry 2という騎士になって戦うゲームがすごい好きなんですけど、
ゲームのプレイングで「キーボードは腰だ、マウスは手だ」みたいなことを言うんですよね。敵を殴るときはマウスで手を振り上げて、キーボードで腰を動かすんだみたいなことを言うんです。実際にプレイするとマウスとキーボードしか動かしてないのに自分がメイスを振っているかの如き身体性があるんですよ。ゲームの本質ってそういう身体性かなと思っています。それを今回のようなダンジョンRPGの話に戻すと、ダンジョンに挑んで敗北すること自体がゲームの身体性の延長なのかなと。そうなると無駄な体験はないと言えますよね。
ー確かにそうですね。
で、私たちが作っているのはエロゲなので、エロに繋がってないといけないので、体験自体をエロい仮想現実にするみたいなコンセプトで作っていますね。それをわかりやすく文章に起こすとさっきの文言になっていくということです。
ーなるほど、あの言葉の抽象度をあげていくとそういうお考えがあるということですね。キーボードマウスが手足で、これを動かしてる自分がエロい目に合うから、エロい体験になると。
そういうことです。妻獲り迷宮の場合はプレイヤーが本気で迷宮からの解放に挑んで負けることと、キャラクターが負けることというこの2つがパラレルになった時に、プレイング自体がエロくなるんじゃないかなという仮説で作ってますね。
ーすごい、ここまで深堀って考えている人はなかなかいないんじゃないでしょうか。
すいません、普段から人に何言ってるかわからないって言われるので不安なところではあります。
ー大丈夫ですよ。読者はついてきています!面白い!
RPG2作目:淫界人柱アラカ~JK退魔師ホラー探索RPG~
(1)
ーその後、音声作品なども出されながら、翌年の「アラカ」で一気にシナリオが6人、イラストが7人に増えましたね。
淫界人柱アラカ~JK退魔師ホラー探索RPG~ 2021年6月発売 DLsiteAWARD2021「優れたストーリー賞」受賞作品
対魔少女の牝肉は淫界を支える人柱となる――
卑猥なる亡霊たちの手が、対魔少女の柔肌に伸びる。『ヒト』の尊厳を少しずつ奪われ、徹底的な調教・改造によって、その牝肉は人柱へと加工されていく。
「そんなこと、させない――!」
闇の巫女となった彼女は何を産み落とすのか――
はい。
ー妻獲り迷宮から大きく人数を増やしたというのにはどういった狙いがあったのでしょうか。
元々、アラカ自体のコンセプトって、実はホラーパートの前半だけだったんですよ。
ーあ、そうなんですね。
はい、「妻獲り」の制作後半であと作るだけだなってなってきた時によく犬侍と「NTRのにおわせってめちゃめちゃエッチだよね」って話をしていたんですよ。でも、2時間、3時間プレイしてその直後の1回のNTRの興奮のために純愛パートをやるのってちょっと贅沢すぎるじゃないですか。理想的な体験ですが、現代のユーザーは忙しいので……
ーそうですね。
で、それにフィットさせるにはどうすればいいかね〜って言って考えたのが、ホラーアパートなんですよ。
ショート(小規模)で1回出そうぜって言ってたんですけど、バッドエンド、ゲームオーバー後の体験を続けるというのが「妻獲り」でウケたんで、じゃあそこを回収に持ってこようかと考えて産まれたのが「アラカ」なんですね。
ーそうだったんですね。
ただ、これは質問の回答になってないですよね。人数を増やした理由……。規模を大きくすることについて理由を考えたことがないんですよね。
ー自分が作りたいものの手段にすぎないと?
そうですね。これもまた個人的な見解になるんですけど、メインヒロイン増やせよとか言われるんですよ。サブキャラいらねえから、メインヒロインパート増やせよって。そういう声があるんですけど、一人のクリエイターが今「旬」のものとして出せるものは決まっている以上、その方向性はあまり良くないと思っていて。
ーというと?
例えば、アラカのシーンを別のクリエイターに無理やり書かせた時に……そのクリエイターが今「旬」でこれが1番うまいんだよっていう「シェフのオススメ」の文章のクオリティと、 無理やり書かせた文章のクオリティって絶対違うと思うんですよ。
ーなるほど。そうだと思います。
そうすると、尺とクオリティを両立するためにはいろんなクリエイターの「旬」を集めてこないといけないなってなったんですよ。で、私が好きなシナリオライターさんにお声がけしてオールスターで行こうぜってなった感じですね。
ークリエイターの「旬」っていう表現、面白いですね。
はい。正確には「クリエイターが「旬」だと思っているもの」ですね。フレンチとか行くとシェフが今は春だから初鰹だよとか言うわけじゃないですか。そういうものだけで構成したコースのほうが美味しくないですかという発想ですね。
ーメインヒロインのパートを増やしてテキストを複数ライターで無理やり繋ぐよりも、ホラーパートのサイコメトリーという形をとって、そのクリエイターの「旬」を存分に披露してもらったと?
そうですね。そこで、アラカの末路を匂わせておいて想像をかきたてるほうが、良い体験になるんじゃないかという発想ですね。
加えて、これは社内でコンセンサスが取れているところではないので私個人の意見にはなるのですが、私はクリエイターは短期間に良いものは大量に書けないという前提に立っています。
ーなるほど、詳しくよろしいでしょうか?
念押しすると「短期間、その瞬間においては」という話ですが。クリエイターの中にも流行りがあるわけじゃないですか。例えば「今はTSのこれが1番今アツいんだよ」みたいな。そういう、クリエイターが「旬」だと思っているネタというのは常に変わっていて、そういうものって「尺」がそんなにないんですよね。例えばそれで100万字書けるかと言われたら書けるわけないじゃないですか。でもだからといって、今は春でカツオが旬なのにカサを増やすためにその時に旬じゃないマツタケとか持ってきたって美味い料理にならないわけですよ。
ーなるほど、面白い。だから、サイコメトリーイベントという形にして、少量でいいので自信のある「旬」のやつだけ出してもらうという……
そうです。かつ、メインヒロインにしないことによって、メインヒロインの末路はわからないけど示唆をするわけじゃないですか。そうすると、NTRゲーの純愛パートの類似でありながら、抜いちゃったとしても次にプレイを再開する時にメインヒロインに対する期待感は持続しますよね。
ーなるほど!確かにそのとおりですね。本命のパートを温存しながらそこまでの過程も飽きさせない工夫がされているということですね。
そうですね。
ーいや、すごい。そこまでデザインされていたとは。
(2)
ーとはいえですよ?言うは易しで、実際にいろんなクリエイターさんが携わると工数が大変なことになってしまうと思うんですけども。
うーん、そうですね。結構そこは犬侍を一番頼りにしているところなんですけど、最小構成を考えるのがめちゃくちゃ上手いんですよ、彼は。
ー最小構成というと?
例えばシナリオだと、1本のメインストーリーみたいな部分ですよね。そこにゴミがないんです。犬侍がプランナーとしてそこをすごく上手く作ってくれるので意外と「アラカ」の時は、手間はもちろんかかりましたけど、課題感みたいなものはあまりなかったですね。
ーなるほど、あとに続く「カクリヨ」ほどの分岐性というか…そういうものはなかった?
そうですね……。「アラカ」は見立てイベントってやつと、サイコメトリーイベントという2パターンを外部ライターさんたちに書いてもらってたんですけど、そのフォーマット化が結構上手くいっていたんですよ。で、「カクリヨ」は調子に乗っちゃって、同じものでいけるだろと思っていたのが、こちらが定義したフォーマットの自由度が高すぎて、ツクールに適応しづらい問題が出て工数が膨らみました。
ーフォーマットというのは具体的には?
この箱の中を埋めてくださいの箱ですね、その箱の自由度が高いとネタは書きやすくなる。一方で自由度が高すぎるとその後の工程でめちゃくちゃ大変になるんですよね。
ーなるほど。
シナリオフォーマットが一定だったら同じシステムで組み込めるけど、そこのシナリオフォーマットがぐちゃぐちゃだと、それごとにスクラッチで組んでいかないといけない。そうすると工数は肥大化していくじゃないですか。
ースクラッチ?
なんて言えば良いんだろう。私システムエンジニアじゃないからうまく喋れないですけど、システムって一定の様式のデータを入力して、一定の様式で出力する箱みたいなものなんですよね。この時に様式が違うと新しいシステムを組まなきゃいけないわけですよ…………この部屋、あれがないですね。
ーホワイトボードですか?確かにこの部屋(貸しオフィスでインタビューを行っています)ないですね。これでも良いですか?(ノートビリビリ
ありがとうございます。フォーマットっていうのはこの段階1、2、3にそれぞれテキストを入れるってやつなんですよね。 (カキカキ
で、このフォーマットを守ってる限り、システムAですべて賄えるんですよ。
でも、このフォーマットが、例えば、じゃあ…4まで来ちゃった場合……
これってシステムBが必要になるんですよね。そうなると、イベントを判定する分岐のシステムが必要になって……みたいなことが起こってどんどん肥大化していくんですよ。だからこのシステムAで処理できて、なおかつシナリオライターが一定の自由度を持って、多様なシナリオを書きやすいフォーマットを作ることが重要なんですよね。「アラカ」の時はそれがうまくいったという感じです。
ーなるほど、そういうものなんですね。……すいません、これは素人考えなんですけど、シナリオに関していえばここに書いてあるシステムB……というかこの2つ目ってあまり用意する必要性がないように思えるんですが、そういうわけではないんですか?シナリオライターさんが既存のフォーマットにはめていけばいいだけでは?
その能力はより上流の領域なんですね。つまり、この指定したフォーマットに中身を入れてくださいってなった時に、この通り書くというのはかなり高度な技能なんです。
ー指定したフォーマットってのは具体で言うとどういうものがあるんですか?
例えばアラカだったら……これ犬侍が書いた見立てイベント「電子レンジ」なのですが
で、なんか固有変数1とか2とかあるんですよ、こういうのは。
ー固有変数+1。例えばこれは何が起こるんですか。
ホラーパートで電子レンジを1回いじると固有変数1。2回いじると固有変数2みたいに増えていくんです。で、固有変数の数値でアラカパートでのエロシーンの内容が変化してくんですね。
で、この部分を最小パターンで書くって難しいんですよね。だからプランナーの領域なんですよ……プランナーというのはストーリーの構成とそのために必要なパーツを定義する人……って感じですね。
ーなるほど。
さっきの質問はここの中にいれたら良いんじゃないかって意図だと思うんですけど、例えば、人が考えたネタでアラカのパートの固有変数<4ってのを考えるじゃないですか。
この時に求められる文字数としては500字くらいだと思うんですよね。でも、これで例えば行為の最初から最後まで全部書いちゃった日には5000字とかになっちゃうじゃないですか。プレイ体験を高めるためにはここにいれるパーツはもっとコンパクトに済ませたいわけですよ。
ーはい。
そうすると、シナリオの一番美味しい部分だけ……一番ボルテージが上がる部分だけを抜粋しなきゃいけないんですね。だから、ノクターンノベルズでそのあたりが上手くてすごくえっちな文章を書いている人にお願いするというのをやっていました。たとえば、今I’m moralistでもう1本『凍堂ヒロカの隷雄譚』というゲームを作っていまして、そこでメインシナリオライターやってるタカマガさんって人がいるんですけど。
ータカマガハラスメント先生、存じ上げております。
【 タカマガハラスメント】
サークル『I’m moralist』メインシナリオライター
あの人を見つけたときはアツかったですね。ノクターンノベルズで見つけたんですけど、私がとてもいいなと思ったのは、実際エロくて抜いたというのももちろんあるんですけど、1番最初『スレイブ・ワン』っていうヒーローを題材にしたシナリオを書いてたんですよね。
ーええ。
で、その人の1日を書いてるんですよ。そしてこれ初めから書いてるんじゃなくて、その人が奴隷になってからのある日のことを書いてるんですね。そうすると、それ以外は別に書かなくても前後の文脈って乗ってくるじゃないですか。
ーはい。
そこのショートのシナリオ書けているのはすごく上手いなと思って。当時、『スレイブ・ワン』は、ノクターンノベルズでも200ポイントくらいの作品だったんですけど、初めてでこれ書けるとか天才かと思ってスカウトしたら、ゲームでもうまく書いてくれましたね。
ーわかってきたかもしれません。つまりゲームシナリオライターにはライティング力に加え編集力も求められると。そしてそれができる人材はめちゃくちゃ重宝されるということですね。
そうですね。少なくともウチの作り方とはすごくマッチするとおもいます。
RPG3作目:淫習のカクリヨ村~メスバレ厳禁モラトリアム~
ー大人数体制になることで懸念されるのが予算だと思うんですけど、その点についての知見みたいなものはあるでしょうか。
予算に関してはさっきの話に戻ります。私たち同人サークルはSPAモデルなんですよ。SPAモデルの代表でいうと例えばユニクロがあると思うんですけど、つまり自社で企画、製造、小売のすべてをしているってことですね。
ーなるほど。一気通貫でやってると。
そう、一気通貫で。そうすると、開発費に投入できるリソースの割合がめちゃめちゃ高くなるんですよ。例えば単純な話、漫画1本出すにしたって出版社だと…ものによりますけど印税って大体10%くらいじゃないですか。つまり、デベロッパーに入るのは10%ってことですよ。でも我々はDLsiteへの委託料を引いた分は全部入ってくるわけですね。そうするとマンガ1つとっても他の出版社さんよりクリエイターさんに高い原稿料を払えるので、良いクリエイターさんにお願いできるという寸法になります。
ーなるほど。
利益率が高いと開発に掛けられるコストも当然高くなる。そうすると、ニッチなところにお金をかけて確実に「取れる」んですよね。なんていうか……市場ってこうあるじゃないですか。(カキカキ
そこに薄く広くニーズに応える製品があってみんなを60%から80%満足させているわけですよ。あくまでイメージですが。
私たちはこの薄く広く良い製品が投入されているところの、ここだけ。狭い部分だけを狙って……例えば、普通の王道系のRPGで異種姦敗北が流行っているとしたら、異種姦敗北だけを120%満足させるリソースを投下して、ここをぶんどろう。
それが終わったら次はここをぶんどろう。
これを繰り返して虫食いにしていくというのが基本戦略なんです。
これはジェフリームーアっていうベンチャー界隈では有名な人が提唱しているキャズム理論のボウリングピン戦略ってやつなんですよね。私は結構、教科書通りに戦うタイプなので。
ーなるほど……では、その教科書通りに今の市況で新規参入するとしたらどうしますか?予算100万円くらいで。
うーん、妻獲りは予算10万で作ってますからね笑
ーあ、そうか。グラフィックがU-mu先生ですもんね。
そうです。私の場合、自分の人件費を除けば、シナリオ委託料だけだったんですよ。しかもそれもレベニューシェア(収益分配型)にしてリスクマネジメントしてるんで。それに……なんていうか、自分より広い製品って必ずあるんですよね。で、ここだけにぶっ刺しにいけばいいだけなんですよ。
で、ついでにここまで取れるか、
運良くここまで取れるのかの話であって、最初の1人だけに刺しにいけば良くないですか?
ーうーん、まだあまりピンときてないですね。もう少し良いですか?
例えば予算100万円だとして、1個あたり1000円で売って500円の利益だとして、2000本が損益分岐になるわけですね。2000本ならスカトロでもなんでも売れるわけですよ。だから、すごいニッチな性癖を持っている人が足りないところに商品を投入すれば良いわけです。
ーうーん……なるほど、では10000本売りたいってなったらどうします?
わからないですけど、それならSteamでやったほうがいいんじゃないですかね。結局、私たちは「市場規模」と「刺しにいく1人の人間」。これしか定義できないんですよ。だから、例えばうちはDLsiteという市場でこの1人にぶっ刺せばこれくらい広がるでしょという推論でやってるんですね。だけど最初「この人に刺せばこのくらい広がるだろう」という推論をするための情報もない。ピボット(方向転換)もできない。となったら1人に120%で刺しにいくというのは確定なんですよ。60〜80%くらいしか満足できない、1人も刺せない製品をつくっちゃうと、既存のプレイヤーが強いので。
※これら一連のやりとりはまさにジェフリー・ムーア著の「キャズム」に書かれていることである。
「マーケティングで成功を収めるには、池の中でもっとも大きな魚になる」ということだ。もしも自分たちが小さい魚ならば、小さい池、すなわち、自分たちの身の丈に合った大きさのマーケット・セグメントを探さなければならない。
(中略)
ただし、ベンダーがある池を支配したとしても、それが長期的にベンダーを支えられるマーケットであるとは言いきれない。遅かれ早かれ、ベンダーは次の池に向かってマーケットを拡大する必要に迫られるだろう。ここで、次の池を攻略するこの戦略を、「ボウリングピン戦略」と呼ぶことができる。つまり、先頭のピンを倒せば続いて二番ピン──すなわち次のマーケット・セグメント──を倒すことができるのだ。このようにして、次々と市場を拡大させていくのである。
ジェフリー・ムーア. キャズム Ver.2 増補改訂版 新商品をブレイクさせる「超」マーケティング理論
ーなるほど。
初めての場合だとマーケット全体の規模しかマーケットセグメントを推論する根拠がないわけで、特定の1人を刺しにいった時についでにGETできる人数を多くするには市場規模を大きくするしかないんですよ。だから、そうするとSteamになりますね。まあ、うちはあんまりSteamで上手くいってないので偉そうなことは言えないですけど……。
ーちなみにSteamで苦戦している理由は?
わからないですけど……犬侍がロリコンだからでしょうか笑。ロリは特に海外で100%の火力を出せないから笑。
ー笑。確かにI’m moralistさんの作風があんまり海外市場に合わないというのはあるかもしれないですね。
そうですね。とはいえ、そこで手を緩めて万人受けにすると、幅広く市場をとっている既存の製品に対して優位性を担保できなくなるんですよね。
ー今のI’m moralistさんなら広くとる路線でもいけそうに思えます。というより、それが上手くいったのが「カクリヨ」じゃないんですか?広めに取りにいった印象があったのですが。
2022年11月発売 DLsiteAWARD2022総合TOP3受賞作品
「愛し合う運命であるのに――愛し合ってほしいと神様が思っているのに、結ばれない運命――それに抗うため、神様は人々を呼び込むのです。幸せな世界を与えてあげるために――」
脱出する方法を求めて探索するヒノリとアオに、村の巫女は衝撃の真実をつげます。
現世に戻れば、二人は引き裂かれ結ばれることがない運命であると──
二人で過ごす1年間のモラトリアム。
老いも死もない、循環するだけの世界で永遠に愛し合うか、別れを乗り越えて未来に踏み出すか。
それはプレイヤーのあなた次第です。
ただ、あれも広くいったわけじゃなくて純愛市場というより大きな市場を取りにいっただけで、刺しにいったことには変わりないんですよ。いつもよりDLsiteでの広い市場を取りにいっただけですね。
ーそういうものなんですね。例えば私主観だと、大手サークルの作品とI’m moralistさんの「カクリヨ村」は受けの広さでいうと同じくらいだというイメージがあるんですけど、そういう認識ではないということですね?
そうです。例えば大手サークルの作品がCG数大量にして広くこんな感じで全部の面を覆っているとしたら、
ウチはどっちかというと徹底的に1ストーリーを掘り下げるという方針なので……大手サークルほど横に広くは展開していないですね。
ーたしかに言われてみればカクリヨは純愛を通すか、NTRの2択だから広く取りにいっているわけではないのか……
そうですね。なんなら「これNTRなしでいいんじゃない?」って犬侍が言ってたくらいだったので……だけど、こんなに良い純愛がかけているのに、NTRを外すなんてとんでもない!って言って、ブラックマンバ先生や燻製ねこ先生にお願いすることになったわけです。
ーそんな話があったんですね笑。本命の純愛「永遠ルート」についてなにかコメントありますか。
あれはそうですね、妻獲りとアラカを作り終わった後に、犬侍が「もう凌辱は書ききった。純愛なんだ。純愛なんだ。もう純愛しか書けない」って言い出して。私も「そっかぁ。じゃあ純愛作るしかないね。」って感じでした笑。結局、さっきも話した通りクリエイターの「旬」はコントロールできないので、本当に売れない確実にやばいだろってやつ以外は却下しないという原則ですね。
ーそうなんですね。U-mu先生はあまりそういうところに口出しはしない?クリエイティブは他の人に握らせている?
そうですね、犬侍と、柳原さんと、タカマガさんと……
【柳原ミツキ】
サークル『I’m moralist』メインイラストレーター
それだけじゃなくウチはブレスト段階ではスタッフみんなに自由に発言してもらいます。ただ、最後の決裁は私がしちゃいますね。なるべくは好きなものを作ってもらう、制約しないというのを大事にしています。
ー好きなものを作ってもらうと言っても、特に外注を多用していると、成果物が期待値とズレるリスクが上がるように思えます。そのあたりをズラさない工夫ってあったりしますか?
さっきのシナリオの話に戻るんですけど、MVP……ミニマムバイアブルプロダクトで作るんですよね。要は、上流工程が最小構成で作られていれば下流工程を拘束しないんですよ。
ーうーん……というと?
なんていうだろう……例えばですよ?世界観を考える時に、じゃあこの世界は魔法があって、この魔法が実は旧科学文明のアレコレで誰それしか使えない……みたいな設定を作るとするじゃないですか。すると、その誰それしか使えないという設定が後々になって課題になってくることって結構あるんですよ。じゃあ、それ直せばいいじゃんってなると思うんですけど、直したら今度はその影響範囲がわからなくなる。
ーなるほど。どこかで辻褄が合わなくなると?
そうです。だから上流工程でその後の工程を制約しないように作ることが大事になるんですよ。
ー具体的にはどうするんですか?
例えばアラカだとまずBADエンドルートを1本書くんですね。
ー人柱エンドをまず書くと。
そうです。そして人柱エンドに関係するもの以外の設定をすべて削るんです。だから最初は「アラカ」の人柱エンドを書くわけですよ。「カクリヨ」だったら永遠ルートを書くんですよ。で、その後はそこに関係ない設定はすべて消す。そうすると、この外側全部が運動可能になるわけですね。
ここまですると、じゃあ、外側のここを埋めたいから書いてくださいと枠で指定してシナリオを誰かに任せればOK。その後のコントロールまでしてしまうと、そのライターさんの今の「旬」の料理はでてこなくなるから諦める。という感じですね。なので如何にこの枠を広く分かりやすく取れるか。ここが重要になってくるんですよ。「アラカ」のサイコメトリイベントと見立てイベントはそんな形でシナリオをお任せしたと思います。
ー具体的にシナリオライターさんにはどのように依頼するのでしょうか?
私はあまりそこに噛んでいないのでわからないんですけど、多分犬侍とライターさんで要件を見ながらブレストして、じゃあこれで行こうねってことをやっているんだと思います。
ーなるほど、そのあたりを犬侍先生がうまいことやって品質担保というかズレを少なくする工夫をされているということですね。
おそらくそうだと思います。そのあたりが彼はめちゃくちゃ上手いんですよね。他のライターを拘束しないようにメインシナリオを書くというのが。
ーそうなんですね。最小単位で1本のストーリーをエンドまで書き切って、分岐の余白をつくる能力が高い?
そうですね。余計な枝を生やさない能力。システムも、これ絶対病院じゃないとダメなシチュエーションなんだよね。って言われても病院のアセットがないやってことが割とあるんですよ。ただ、彼の場合は「これ病院じゃなくても大丈夫なんじゃない?」みたいなことを考えてくれるんですよ。……あれこれ……お題は何でしたっけ。なんか真面目な話ばっかりしてるけど大丈夫ですかねこれ。
ー大丈夫です。まさにU-mu先生からしか聞けないですからこういう話は。品質コントロールの話ですね。
ちなみに、大規模制作に関しての犬侍のコメントがあったんですけど、
ーはい。
まず、やはり1本道のBADエンド。これをまずプランナーが作るらしいです。その周辺部にサイコメトリイベントを配置して、好きなクリエイターに存分に書いてもらってお祭りみたいにするということをやっているみたいですね。
ー「アラカ」、「カクリヨ」はまさに……ただ、「カクリヨ」はめちゃくちゃ複雑なつくりでしたね。バグり放題みたいな状態になりそうだなと直感的に思ったんですけど。
そうですね、オープンワールド気味にした上に四季システムがあったんで、そういう部分はあったかもしれないですね。
ーいや、あれをバグらせずに世に出せるの本当にすごいなって思いました。
開発規模がすごい上がっちゃったというのはありますね。で、犬侍も開発能力に合わせたシナリオとプランニングをするように心がけてるけど、見誤ってたみたいなことは言ってました。あとは、先ほども言った、アラカで上手くいっていた部分を少し自由度を上げてやったら、予想以上にみんなが独自のアイデアを盛り込んでくれて、シナリオ自体はすごい良くなったけど、実装が大変でしたね。
ーシナリオも最高でしたし、四季システムも素晴らしかったですね。
これは個人的な意見なんですけど、四季システムに関しては私が「これ本当にやる?大変だよ?」って100回くらい言ったんですけど、犬侍が「どうしても四季は必要なんだ」って言ったから、「じゃあやろうか…」という感じでしたね笑。
ー笑。それはどこかで見た気がしますね。Ci-enで四季システムは犬侍がどうしても入れたいというので仕方なく入れました。みたいなことを書いていたのを記憶しているんですが。
多分何回も書いてますね笑。彼は課せられた制約、つまり開発能力の限界の中で書けなかったから失敗だって言ってましたが。一方で私は、これはちょっと矛盾するかもしれないんですけど、予算を超過しない中で制約をかけない企画をするのが大事かなと思っていて。
ーというと?
要は集中投資ですよ。予算を超えない範囲で一点突破すると。逆に普通のゲームにはあるけどこれ実はいらないんじゃね?ってところを削りまくるんです。そして、今回はここは絶対に必要だよねってところだけに徹底的にコストをかける。カクリヨで言えばオープンワールドだったり四季システムですよね。
ーなるほど。
これらのことは、チームが技術力を増していって作れるものを増やせるようになる、つまりチームの成長とイノベーティブな製品制作にあたってはすごく大事なんじゃないかなと思いますね。
ー結果として、「カクリヨ」はまさに頭ひとつ抜けた感があったのではないでしょうか。カクリヨ村はDLsiteアワードTOP3も受賞されましたね。
そうですね。ありがたいです。あれ公式には1位2位3位ってついてなかった気がするのに2番目にあったから2位扱いされているのが若干気になりますが笑。
ー笑。少し話が変わるんですけど、I’m moralistさんの作品に共通する部分で、特に声優さんに顕著なんですが、バチバチの一番人気の売れっ子ではなく比較的まだ世に出切っていない人を積極的にキャスティングする傾向があるように思えたのですが、そこはあまり意識されてないですか?
そうですね、意識は一定している気はしますね。ただ、もう少し大きな話をすると、仕事ってビジネス的な要求があって要件があって実装があるわけですよ。で、要件定義までやれるプロの声優さんにお願いしているというだけなんですよね。
ーもう少し詳しく聞かせていただけますか?例えば「ビジネス的な要求」、「要件」というのはどのレイヤーの話?
例えば、「これTS娘なんで、男っぽい言葉だけど声帯が変わっちゃってる感を出してください。」「ただ、ここから先はもう女の子化しちゃってるんで女の子っぽく喋ってください」というのがビジネス的要求の階層ですよね。
ーなるほど。
で、これに対して要件っていうのは「じゃあだったらこのくらいの声の高さでこういう風な演技をします」という階層です。そして「じゃあ、それでオッケーです」といって承認したら実装に入るという流れなんですね。これはあくまで個人的意見ですが、ここの要件を決めるところの積極性がある方にお願いすると、作品のクオリティもあがるし、お互いの工数も減ると思います。
ー積極性というのは具体的には?
設計力ですよね。イラストレーターさんでいうと画面があるじゃないですか。例えば騎乗位を描けと言われて、いろいろあるわけじゃないですか。例えばこういう感じで女の子がいてこういう視点にするのか、真横からこういう視点にするのか。(カキカキ
無限にあるわけじゃないですか。同じビジネス的要求でも。これをどれにすべきか提案できるというのがプロのクリエイターの仕事だと思うんですね。「今回はこういう要求でこういうシナリオだからこれが良いと思います」と言えるのがプロだと思うんですよ。
ーなるほど、確かにそうですね。
だから声優の話に戻すと、このプロの仕事をできる人をキャスティングしているだけです。要件定義がちゃんとできる人=プロという認識なのでそこをきっちりやってくださる声優さんにスターシステム的(異なる作品に、同じキャラクター、人物を登場させる手法)にお願いしてます。ですので、どっちかというとフォロワー数とかでは選んでないという感じですね。
ーたしかにI’m moralistさんの作品で出演数が多い藤村さんも御子柴さんもその辺りの能力がめちゃくちゃ高い印象がありますね。
そうですね。藤村さんや御子柴さんたちは要件定義力がとても高いので本当に助かっていますね。彼女たちにいつもお願いしているのがそういう理由です。藤村さんも御子柴さんも、複数役無茶ぶりしても、なんなく演じ分けて対応してくださる天才なので……。
【最新版】I’m moralistリクルート情報!!
2023年は大きいところでいうと、苗床クリッカーですね。
そうですね。そこはもう、Unityつくるのに実装モデルで400円で売れるやつをまず作ろうぜって始まりました。
ー結果それを売っちゃうんだからすごいですよね。
ありがとうございます。
ーあれがセールされていると、売れても私のところにアフィリエイト収入が2円とかしか入らない笑
笑。すいません。ただ、ああいう「配る」商品があると何かと便利ですよね。あと、内部的な話でいうと、yuzさんという開発部長がいるんですけど。
ーyuz-co-show先生ですよね。存じ上げております。
サークル『I’m moralist』開発部長
そうです。あの人に本格的に全部任せた1本目だったんですよ。
ーなるほど、そうだったんですね。その絡みでいくと…正社員とかもどんどん採用しているとお伺いしたいんですけど、今何名くらいいらっしゃるんですかね。
やばい……人数数えてからここに来ようと思ったんですけど……えーと、10人ですね。
ー正社員10人というと同人でいうとほぼ最大規模では?
他サークルさんの事情がわからないのでなんとも言えないですけど、正社員の数は多いと思いますね。アサイン数は他の大手サークルさんのほうが多い気がしますが。
ーアサイン型じゃなくて正社員を採用するというのは、信念のようなものはあるのでしょうか。
そうですね。一番にあるのは作る人全員をハッピーにしたいというところですよね。で犬侍からすると、シナリオ1本、アイデア1本じゃなくて、オナニーフレンドリーを前提とした面白くてエロいゲームを作りたいというところで……
ーアサイン偏重ではなく、理念に共感したチームでそれを作り上げたいと。
そうですね。それに加えて、これは私の個人的な見解になるんですけど、先ほど申し上げたような要件定義などの上流工程をしっかりできるようになってもらうにはやっぱり正社員なのかなというふうに考えています。
ーなるほど。これから採用されるにあたって、どういった人材を求めていますか?
やっぱりゲームを作りたい人ですよね。当たり前だろって感じなんですけど、ゲームを作りたいという熱意を持った人に来てほしいというのはあります。
ーありがとうございます。I’m moralistさんの会社は非常にファミリー感というか一体感があるなと思うのですが、社員のモチベートや雰囲気づくりでなにかこだわっているところはありますか?
そうですね、みんなやる気があるんで基本的には何もしていないですね。ただ、これはちょっとリクルートの宣伝っぽくなっちゃうんですけど、なるべく毎年昇給するようにはしていますね。
ーすごい。
一応人事評価マップと給与テーブルをつくって、今ここだからここまでいったらいくらまで昇給するねという話をしたりしています。……これは書いても良いのかな……?ちょっと私じゃ判断できないですけど、日経の記事でそういうのがあるんで多分大丈夫だと思います笑。
ー貴重なお話ありがとうございます笑。
RPG4作目:淫神供儀ネヲナ~TS変身退魔少女の屈服~
ーそして、いよいよ7/16(火)に発売される(現在発売中!)待望のI’m moralist最新作、『淫神供儀ネヲナ~TS変身退魔少女の屈服~』ですが……
はい。
ー私が最初に抱いた印象は、フレーバーではない本格的なゲーム性を初めて取り入れたな、というところだったんですけど。そのあたりはどのように考えられていますか?
そこはあまり意識していなくて正統進化かなと思っています。犬侍いわく、やっとやりたいことに開発力が追いついてきたということを言っていたんですけど、私も同意見で。初めの方に申し上げた通り、プレイングがエロいゲームを作りたいという方針は一貫しているんですよね。なので、開発規模が増えたので、できることが増えたと。純粋にそういった所感ですね。
ーなるほど。そもそもの前提が違って、妻獲りやアラカでは限られたリソースの中で体験を向上させるためになんとかやりくりしていたが、ネヲナになって少しゆとりが生まれたと?
そうですね。最初に申し上げたゲーム操作によるうんちゃらみたいな話を盛り込む余地が増えたということですね。今回採用したカードゲームも僕の考えたTS魔法少女だったらこういう風に戦うよね、こういう風に負けるよねっていう手触りを感じられるようなシステムに落とし込めていると思います。
ー他の案はちなみにあったんですか?ブレスト段階で。
そうですね、システムとしては、私が想定していたのは『Darkest Dungeon』ってわかります?
ーダーケストダンジョン……?(カタカタ。……あ、これですね。
横スクダンジョンスクローラーってやつを考えていたんですよね。横スクロールってシームレスにエロCGやエロアニメに移行できるじゃないですか。……ただ私、アクションめっちゃ苦手でして。普通にコマンド式でRPGツクールのようなプレイ感で横スクロールでできるやつにしようとしたんですね。ですから、戦闘はコマンド式を考えていたんですけど、シナリオライターたちから「カードでTS魔法少女をロールプレイできるようにしようぜ」って話が出て、適応性も高いのでそれにしたという感じですね。
ーそうだったんですね。
だから、たまに『Slay the Spire』みたいって言われるんですけど
構想段階では『Slay the Spire』は参考にしていなくて。どちらかと言うと先ほど申し上げた『Darkest Dungeon』ライク+カードゲームって感じですね。
ーなるほど。「ネヲナ」のカードゲームもかなり本格的というか……様々なデッキ構成が作れる作りになっているのに加えて、カードゲームとエロを融合させるための数々の工夫が凝らされていると感じましたね。現に発売前から多くの人がマイデッキをDLチャンネルなどにあげています。
サークルサークル「I'm morarlist」さん発売予定の『淫神供儀ネヲナ』のデッキビルド集です。現在体験版バージョン…
そうですね。うちのスタッフはみんな全然好みは誰も合わないんですけど、ゲームに一家言あるやつらばかりなので、その中で調整したらあんな感じのゲームになったという感じですね。あとはプランナーの犬侍の方針でプレイしていて楽しいデッキを作れれば良いという発想で作っています。強くても、エロくても。なので「どっちが強い」とか、「厳密なバランス感」とかよりも徹底的に私の考えた最強の、あるいはエロいTS魔法少女をできるというコンセプトでつくりました。
ーどちらかと言うと俺TUEEEEE!やエロい体験に振り切れる感じということですか。であるならば、カードゲームが苦手な人も安心して遊べる設計になっているということですね。
そうですね。
ーありがとうございます。最後になりますが発売への意気込みなどありましたら、お願いします。
そうですね。今作はインキュベーション(新規製品及び事業を立ち上げるプロセス)なので、「カクリヨ」の利益の大半をぶち込みました。なので、売れてほしいなというくらいですかね。笑。
ーすごい笑。本日はU-mu先生からしか聞けない貴重なお話を伺うことができました!ありがとうございました!
ありがとうございました!
完。